
手術の前後は、水分をどのように摂ればいいですか?

手術前は決められた時間まで水分を摂り、手術後は少しずつこまめに飲むことが大切です。ヘルニア外科医が、鼠径ヘルニア手術の前後の水分の摂り方を解説します。
体の約60%は水。なぜ手術の前後に水分が大切なの?
成人の体の約60%は水分でできています。
血液、細胞の中と外の水分、消化液など、体の働きはすべて水を基盤にしています。
水には、主に次の役割があります。
・酸素や栄養を全身へ運ぶ
・老廃物を体の外へ出す
・体温を一定に保つ
体重の1〜2%の水分が失われるだけでも、頭痛やだるさ、便秘などが起こることがあります。
高齢の方は喉の渇きを感じにくいため、気づかないうちに水分が不足しがちです。
外科医が術後にまず確かめる「水分」
手術の前後では、水分が足りているかどうかが回復を大きく左右します。
水分が足りないと、次のようなことが起こります。
・血液の量が減り、体のすみずみまで血液が届きにくくなる
・傷の治りに必要な酸素や栄養が届きにくくなる
・腸の動きが鈍り、便秘になりやすくなる
術後の経過が思わしくないとき、まず「体の水分は足りているか」を確かめます。
特別な治療を考える前に、回復の土台が整っているかを見るためです。
乾いた土では植物が育ちにくいように、水が足りなければ、体が本来もっている回復の力も発揮されにくくなります。
手術前:いつまで水を飲んでいいの?
全身麻酔の手術では、胃の中を空にしておく必要があります。
麻酔中に胃の内容物が逆流し、肺に入ることを防ぐためです。
当院では、原則として次のようにお願いしています。
・食事:手術前日の夜11時まで
・水分:手術当日の朝7時半まで(水・お茶のみ)
牛乳やジュース、コーヒーは食事と同じ扱いになるため、当日の朝は飲めません。
当日の朝は、7時半までにコップ1杯の水を飲んでおくようお伝えしています。
一方で、絶飲食の時間が長くなりすぎると、体は脱水に傾きます。
決められた時間までにしっかり水分を摂っておきましょう。
麻酔中に何が起きているのか? 鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術(お腹に小さな穴を開けて行う手術)は、全身麻酔で行います。 全身麻酔がかかると、体には大きな変化が起きます。・意識がなくなる ・のどの反射(嘔吐反射・嚥下反射)がなくなる ・気道を守る筋肉の働きがなくなる通常、...
手術当日:手術が終わったら、いつから飲めるの?
手術が終わって約20分後には、回復室から個室へ歩いて移動します。
個室に移ったら、まず水を飲んでいただきます。
その後、体調に問題がないことを確かめて、手術の約2時間後に帰宅します。
帰宅してからも、水分は少しずつ、こまめに摂ってください。
麻酔の影響が残っているうちに一度にたくさん飲むと、吐き気につながることがあります。
食事に制限はありません。
はじめは消化の良いものから始めると安心です。
飲酒は、手術後24時間は控えてください。
鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術の流れ 受診1回目:外来に受診 約1時間〜1時間半マイナンバーカードと、持っている方はお薬手帳、紹介状を持参してください。診察して診断し、病状や治療方法について説明を受けます。 手術を受ける場合は、術前検査、手術オリエンテーションがあります...
手術後の毎日:どのくらい飲めばいいの?
人の体からは、1日に約2.5リットルの水分が失われています。
そのうち、食事から約1リットル、体の中でつくられる水分で約0.3リットルが補われ、残りの約1.2リットルは飲み物で補う必要があるとされています。
汗をかく季節や、熱があるときは、必要な量がさらに増えます。
おすすめは、時間を決めて少しずつ飲むことです。
・起きたらコップ1杯
・食事ごとにコップ1杯
・入浴の前後にコップ1杯
・寝る前に少量
喉が渇いたと感じたときには、体はすでにやや水分が不足した状態です。
渇く前に飲むことを習慣にしましょう。
水や麦茶が基本ですが、ふだん飲む程度のお茶やコーヒーも水分補給になります。
ジュースや清涼飲料水は糖分が多いため、日常の水分補給には向きません。
尿の色が濃い、量が少ないと感じたら、水分が足りていないサインです。
手術後の便秘といきみを防ぐには?
腹腔鏡手術の後は、便秘になる方が少なくありません。
麻酔や痛み止めの影響、体を動かす量が減ること、食事や水分の量が減ることなどが重なるためです。
便秘でいきむと、お腹に強い圧力(腹圧)がかかります。
手術をした部分にも負担がかかるため、術後しばらくは強くいきむことを避けたいところです。
便秘を防ぐために、次のことを心がけてください。
・こまめに水分を摂る
・手術の翌日から、無理のない範囲で歩く
・食物繊維の多い食事を少しずつ増やす(水分と一緒に摂ることが大切です)
・処方した便秘薬を使う
術後は便秘になる方が多いため、当院では手術を受けた方に便秘薬を処方しています。
多くの場合、術後の便秘は1週間ほどで自然に良くなります。
「便秘」とは何か 便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症(日本消化管学会)では、便秘を「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義しています。 ...
心臓や腎臓の病気で、水分を制限されている方は?
心臓や腎臓の病気などで、主治医から水分を制限されている方もいます。
その場合は、この記事で紹介した目安ではなく、主治医の指示を優先してください。
手術前の外来では、持病や飲んでいる薬とあわせて、水分制限の有無もお知らせください。
まとめ
・手術前は、決められた時間まで水分を摂り、その後は絶飲食を守る
・手術後は、少しずつこまめに水分を摂る
・水分補給は、術後の便秘といきみを防ぐことにもつながる
・水分を制限されている方は、主治医の指示を優先する
水は薬ではありません。
特別な栄養素でもありません。
しかし、手術からの回復を支える、最も基本的なものです。
高価なサプリメントよりも、まずはコップ1杯の水から。
体は、きっと正直に応えてくれます。
よくある質問(FAQ)
Q:手術当日の朝は、水も飲んではいけませんか?
A:当院では、原則として手術当日の朝7時半まで、水やお茶を飲むことができます。7時半までにコップ1杯の水を飲んでおいてください。牛乳やジュース、コーヒーは飲めません。
Q:コーヒーやお茶は水分補給になりますか?
A:ふだん飲む程度の量であれば、水分補給になります。ただし、手術当日の朝に飲めるのは水とお茶だけです。
Q:手術後にスポーツドリンクや経口補水液を飲んでもいいですか?
A:飲んでもかまいません。発熱や下痢などで脱水が心配なときは、経口補水液が役立ちます。ただし、スポーツドリンクは糖分を含むため、日常の水分補給は水やお茶を基本にしてください。
Q:手術後、お酒はいつから飲めますか?
A:手術後24時間は控えてください。アルコールは水分補給にはならないため、飲酒を再開した後も、水やお茶で水分を補うようにしてください。
Q:手術後の便秘が続くときは、どうすればいいですか?
A:多くの場合は1週間ほどで自然に良くなります。当院では手術を受けた方に便秘薬を処方しています。水分補給と歩くことを続け、便秘薬を使っても改善しない、お腹が張って苦しいといったときは、我慢せずに当院へご連絡ください。
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は当院に相談を!
大宮駅から徒歩3分にある埼玉外科クリニックでは、腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っています。
当院は最難関の内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)の資格を持ったヘルニア外科医による腹腔鏡手術が受けられる、日本でも数少ない外科クリニックです。
ヘルニア外科医の院長松下が、責任を持って手術を行います。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は、まずは当院のヘルニア外来に受診してご相談ください。

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