鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治りますか?
成人の場合、鼠径ヘルニアが自然に治ることはありません。
タイヤのパンクと同じように、お腹の壁に穴が開いていますので、それを何らかの方法で塞ぐ必要があります。
筋トレをしても、穴が塞がることはないので、治りません。
ヘルニアバンドで押さえても、手でおさえているのと同じ状態なので、治りません。
手術以外に治療法はなく、突然嵌頓することや、徐々に症状が悪化していくので、悪化する前に治療することが勧められています。
鼠径ヘルニア(脱腸)を放置する2つの危険性とは?
もし鼠径ヘルニア(脱腸)の手術をしないで放置すると、1. 症状が悪化する危険性と、2. 腸が嵌頓(かんとん)する危険性があるので、注意が必要です。
1. 鼠径ヘルニア(脱腸)の症状が悪化すると?
鼠径ヘルニア(脱腸)を放っておくと、徐々に膨らみが大きくなり、陰嚢まで腫れてしまうことがあります。
また、痛みや違和感などの症状が強くなることもあります。
もし鼠径ヘルニアを手術しないで放置しても、すぐには困らないので、そのまま放っておかれることがあります。
相談した医師によっては、様子を見ましょうと言われてしまうことがあります。
経過観察する場合、症状が悪化してくるため、毎年10%程度の割合で手術になったという報告もあります。
術前に痛みが強いと、術後にも痛みが残りやすい傾向があります。
放置期間が長いと、手術が難しく難渋する傾向があり、合併症のリスクが増加します。
鼠径ヘルニアの治療は緊急性がないものの、自然に治ることはなく、徐々に悪化するので、悪化しないうちに手術することをお勧めします。
2. 鼠径ヘルニア(脱腸)の嵌頓とは?
嵌頓とは、腸が腹壁から脱出して、締めつけられたまま戻らなくなった状態です。
足のつけ根の膨らみが硬くなり、横になっても手で押しても戻らなくなります。
鼠径部の痛み、腹部膨満、吐き気や嘔吐、腹痛など様々な症状が出現します。
腸閉塞、腸管壊死、腸管穿孔を起こし命に関わるので、一刻も早く受診し、緊急手術が検討されます。
嵌頓の緊急手術は死亡リスクが高い(死亡率は4.0~5.8%)だけでなく、開腹手術になる可能性が高くなります。
嵌頓するリスクは1年間で0.3~3%程度ですので、それほど心配する必要はありませんが、発症した場合は急を要しますので、すぐに救急外来に受診してください。
もし手術をしないで経過観察する場合は、主治医とよく相談して、こうしたリスクを理解しておくことが大切です。
鼠径ヘルニア(脱腸)が嵌頓して、急に痛くなったら?
鼠径ヘルニアは、重い感じの痛みや引きつれた痛み、鈍い違和感を伴うことがあり、出ている腸を押して戻すと楽になります。
いつもと同じ痛みであれば、大抵は心配なく、痛み止めを飲んで対処しても構いません。
しかし、痛みが急に強くなり、戻そうとしても戻らなくなることがあります。
その時は嵌頓している可能性があるので、すぐに救急病院に受診してください。
更に悪化すると、腸が詰まって腸閉塞となり、腸が壊死して腹膜炎になります。
外科医が診察しても嵌頓が戻らない場合は、緊急手術を行います。
既に腸が壊死してしまっている場合は、腸を切除する必要があります。

2023.01.01
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