
鼠径ヘルニア(脱腸)を放置するとどうなりますか?痛みがなければ、様子を見ていても大丈夫ですか?

大人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、少しずつ大きくなっていき、まれに「嵌頓(かんとん)」という緊急事態が起こることもあります。ヘルニア外科医が、鼠径ヘルニアを放置する危険性について詳しく解説します。
鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治りますか?
鼠径ヘルニア(脱腸)は、お腹の壁の弱い部分から、腸や脂肪などが飛び出してくる病気です。
足のつけ根(鼠径部)が膨らみ、立つと出てきて、横になると引っ込むのが特徴です。
大人の鼠径ヘルニアは、自然に治ることはありません。
タイヤのパンクと同じで、お腹の壁に「穴」が開いている状態です。
穴は、何らかの方法で塞がない限り、元には戻りません。
- 筋トレをしても、穴は塞がりません
- ヘルニアバンドで押さえても、手で押さえているのと同じで、治りません
治す方法は手術だけです。
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は? 鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は、手術が唯一の方法です。手術方法は腹腔鏡を使う方法や鼠径部を切開する方法などがあります。 日本ではまだ入院手術が多いものの、日帰り手術も徐々に増えてきています。鼠径ヘルニア(脱腸)は手術をしなくても治せますか...
鼠径ヘルニア(脱腸)を放置するとどうなる?2つの危険性

鼠径ヘルニアを手術せずに放置すると、次の2つの危険性があります。
- 膨らみや症状が、少しずつ悪化していく
- 突然、腸が挟まって戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」が起こることがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
膨らみや症状が少しずつ悪化する
鼠径ヘルニアは、時間とともに少しずつ大きくなるのが一般的です。
男性では、膨らみが陰嚢(いんのう)まで達することもあります。
膨らみが大きくなると、次のような影響が出てきます。
- 歩く、立ち仕事をする、運動するときの違和感や痛みが強くなる
- 膨らみを押し戻すのに手間がかかるようになる
- 日常生活や仕事に支障が出て、生活の質が下がる
また、放置期間が長く、ヘルニアが大きくなってからの手術は、難易度が上がることがあります。
さらに、手術前の痛みが強い方は、手術後も痛みが残りやすいことが知られています。
「困ってから手術」より「困る前に手術」の方が、手術そのものの負担が少なく済む場合が多いのです。
ヘルニア嵌頓(かんとん)が起こることがある
ヘルニア嵌頓とは、飛び出した腸が穴の部分で締めつけられ、お腹の中に戻らなくなった状態です。
嵌頓すると、次のような症状が出ます。
- 足のつけ根の膨らみが硬くなり、横になっても押しても戻らない
- 足のつけ根の強い痛み
- お腹の張り、腹痛
- 吐き気、嘔吐
そのままにすると、腸閉塞(ちょうへいそく)や、腸が腐る「腸管壊死(えし)」、腹膜炎を起こし、命に関わります。
嵌頓が起こる頻度は1年間で0.3~3%程度ですので、それほど高くはありません。
ただし、いつ起こるかは予測できません。
そして、起きてしまうと話は大きく変わります。
緊急手術は、予定して行う手術に比べて、死亡する危険性が大きく高まる(死亡率は4.0~5.8%)ことがわかっています。
痛みがなければ、経過観察でも大丈夫ですか?
症状がない男性の鼠径ヘルニアは、少しの間、経過観察(様子を見ること)も可能です。
しかし、鼠径ヘルニアは、自然に治癒することはありません。
鼠径ヘルニアを放置すると、ヘルニアが悪化する可能性があることと、ヘルニア嵌頓のリスクが常に存在します。
いつ嵌頓が起こるかという不安を抱えながら生活することになります。
そのため、鼠径ヘルニアは診断された時点で、手術することが推奨されています。
もし経過観察している場合でも、悪化してきた時は、早めに手術を検討しましょう。
経過観察している場合に大切なこと
経過観察している場合は、次の点を守ることが大切です。
- 一度はヘルニア外来を受診し、本当に鼠径ヘルニアか、経過観察してもよいかを確認する
- 膨らみの大きさや痛みが変わってきたら、再度受診する
- 嵌頓のサイン(膨らみが硬くなって戻らない、強い痛み、吐き気など)を知っておく
通常はピンポン玉ぐらいの膨らみで手術することが多いです。
それ以上の大きさになったら、早めに相談しましょう。
女性の鼠径ヘルニアは、早めの手術が勧められます
女性の場合は、男性とは考え方が異なります。
女性の足のつけ根の膨らみには、大腿(だいたい)ヘルニアが隠れていることがあります。
大腿ヘルニアは穴が小さく、嵌頓を起こしやすいヘルニアです。
そのため、女性の鼠径部ヘルニアは、早めの手術が勧められています。
女性が鼠径ヘルニア(脱腸)になることはありますか? 鼠径ヘルニア(脱腸)は男性に多い病気ですが、患者数が多いので、女性にも比較的多い病気です。 国内では毎年14万人以上の方が、手術を受けており、外科の中では最も手術数の多い疾患です。生涯発症率は女性が3-6%で、男性の27-4...
急に痛くなって、戻らなくなったら?

鼠径ヘルニアでは、重い感じの痛みや、引きつれるような痛み、鈍い違和感が出ることがあります。
いつもと同じ程度の痛みで、横になったり押したりすると戻るのであれば、慌てる必要はありません。
しかし、次のような場合はヘルニア嵌頓の可能性があります。
- 膨らみが急に硬くなり、横になっても押しても戻らない
- いつもと違う強い痛みが続く
- お腹が張る、吐き気や嘔吐がある
- 膨らみの皮膚が赤くなっている
このような時は、夜間や休日でも、すぐに救急病院を受診してください。
自力で受診できない場合は、ためらわずに救急車を呼びましょう。
当院には入院施設がなく、緊急手術には対応できません。
嵌頓が疑われる場合は、当院の予約を待たずに、救急病院を受診してください。
救急病院では、外科医が腸を押し戻す処置を試み、戻らない場合は緊急手術になります。
腸がすでに壊死している場合は、腸を切除する手術が必要です。
まとめ
- 大人の鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治らず、治す方法は手術だけです
- 放置すると、膨らみや症状が少しずつ悪化し、手術の負担が大きくなることがあります
- ヘルニア嵌頓の頻度は高くありませんが、起きると緊急手術が必要で、命に関わることがあります
- 症状がない男性では経過観察も選択肢ですが、いずれ手術が必要になります
- 女性は大腿ヘルニアの可能性もあるため、早めの手術が勧められます
- 膨らみが硬くなって戻らない、強い痛みや吐き気がある時は、すぐに救急病院へ
足のつけ根の膨らみが気になる方は、まずはヘルニア外来で相談してください。
鼠径ヘルニア(脱腸)の初期症状は? 鼠径ヘルニアの初期症状は、鼠径部(足のつけ根)の軟らかい膨らみ(しこり)と違和感です。 お風呂で鼠径部がぽっこり膨らんでいることに気づく人も多いです。立ち上がったりお腹に力を入れると、鼠径部がぽっこり膨らみ軟らかいしこりができます。 進行...
よくある質問(FAQ)
Q:鼠径ヘルニアは、どのタイミングで受診すればよいですか?
A:足のつけ根に、立つと膨らみ、横になると引っ込む柔らかい膨らみがあれば、鼠径ヘルニアの可能性が高いと考えられます。一度ヘルニア外来を受診して、診断と今後の方針を相談することをお勧めします。
Q:痛みがなければ、手術しなくてもよいですか?
A:症状がない男性の場合、経過観察も選択肢の一つです。ただし、経過観察を選んだ方の多くは、いずれ症状が悪化し手術を受けています。お仕事や生活の予定も含めて、手術の時期を早めに相談しておくと安心です。
Q:経過観察にすると、手術が難しくなりますか?
A:経過観察の途中で手術に切り替えた場合でも、多くの方は問題なく手術を受けられます。ただし、ヘルニアが大きくなったり、痛みが強くなってからの手術は、難易度が上がったり、手術後に痛みが残りやすくなったりすることがあります。
Q:鼠径ヘルニアを放置すると、命に関わることはありますか?
A:ヘルニア嵌頓を起こして腸が壊死した場合、腸を切除する手術が必要になり、命に関わることがあります。頻度は高くありませんが、ゼロではありません。嵌頓のサインを知っておき、疑わしい時はすぐに救急病院を受診してください。
Q:ヘルニアバンドをしていれば、放置しても大丈夫ですか?
A:ヘルニアバンドは膨らみを外から押さえるだけで、ヘルニアを治すことはできません。また、バンドを使っていても嵌頓を防げるわけではありません。手術までの一時的な対策と考えてください。
鼠径ヘルニア(脱腸)とは?鼠径ヘルニアは、腹壁の筋肉が弱くなり、お腹の中の腸や脂肪が鼠径部(足のつけ根)から外に突出する病気です。 一般には「脱腸」と呼ばれ、中高年の男性に多く見られます。 自然に治ることはなく、進行するとしこりが大きくなり日常生活の支障になることがあります。...
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は当院に相談を!
大宮駅から徒歩3分にある埼玉外科クリニックでは、腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っています。
当院は最難関の内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)の資格を持ったヘルニア外科医による腹腔鏡手術が受けられる、日本でも数少ない外科クリニックです。
ヘルニア外科医の院長松下が、責任を持って手術を行います。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は、まずは当院のヘルニア外来に受診してご相談ください。
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048-650-2555(鼠径ヘルニア専門外来の予約専用)
診療時間:9:00〜17:30【完全予約制】
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