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鼠径ヘルニアの院長コラム

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みの原因は?何科ですか?

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みの原因は?何科ですか?

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みの原因は様々で、いろいろな診療科の病気が原因となります。
ヘルニア外科医の院長松下が、鼠径部の病気についてわかりやすく解説します。

鼠径部(鼠蹊部、そけいぶ)とは?

鼠径ヘルニア、脱腸、写真
鼠径部(鼠蹊部、そけいぶ)とは、足の付け根、太ももの付け根のことです。

鼠径部とは、左右の足の付け根に溝の内側の部分のことで、恥骨の左右外側の場所にあたります。
上の画像(イラスト)で膨らんでいる場所が鼠径部で、Vラインとも呼ばれ、股関節の付近になります。

鼠径部は足の付け根の前面のことを指し、後面は鼠径部とは言いません(殿部と言います)。

鼠径部の由来は?

精巣(睾丸)は胎生期(出産前)にお腹の中で発生し、鼠径管を通って、陰嚢内に降りてきます。

鼠径部の由来は、精巣の移動が鼠(ねずみ)に例えられたことからと言われています。

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みの原因は?

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みの原因は、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、ヌック管水腫、鼠径部リンパ節腫大、鼠径部リンパ管炎、鼠径部皮下腫瘍、鼠径部皮下膿瘍、鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)、精索静脈瘤など、様々な診療科の病気の可能性があります。

その中で最も多いのが、鼠径ヘルニア(脱腸)です。
鼠径ヘルニアは、鼠径部の壁が裂けて、そこにあいた穴から腸が出てくる病気です。

足(股関節)を動かして痛い場合は、整形外科疾患の可能性が高くなります。
鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)や、股関節・恥骨部の炎症などでも痛みを自覚することがあります。

お腹の中が痛い場合は、腸管など内臓が原因かもしれません。
女性の場合は婦人科疾患も念頭におく必要があります。

鼠径部の症状は、病歴や超音波検査、CT検査などを駆使して、慎重に診断する必要があります。
原因がはっきりしない時は、泌尿器科、整形外科、消化器内科、産婦人科、皮膚科など、各々の専門科で原因を精査する必要があります。

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みで疑う病気は?

鼠径ヘルニア(脱腸)

鼠径ヘルニア(脱腸)では、立つと鼠径部が膨らみ、押したり横になると戻ります。膨らみの大きさはピンポン球から卵ぐらいのことが多く、更に進行すると鼠径部から陰のうまで膨らみます。腸が出てぽっこり膨らむと、違和感や重い感じの痛み、突っ張ったような痛みを感じることがあります。大抵は軽い違和感ぐらいのことが多いです。

大腿ヘルニア

大腿ヘルニアは鼠径部ヘルニアの一種で、鼠径部よりやや尾側の大腿部にしこりを触れます。

ヌック管水腫

ヌック管水腫は女性特有の病気です。鼠径部にコリッとしたしこりを触れて、押しても無くなりません。鼠径部にあるヌック管に水がたまる病気で、しこりと痛みで自覚することが多いです。子宮内膜症と関連することがあります。

鼠径部リンパ節腫大、鼠径部リンパ管炎

鼠径部リンパ節が腫れると、小豆のようなしこりとして触れます。鼠径部リンパ管炎の場合は、感染に伴って鼠径部リンパ節が腫れて痛みます。足や骨盤の感染が原因となることが多く、内科や泌尿器科、産婦人科などで治療します。悪性リンパ腫やがんの転移などの腫瘍性病変自己免疫疾患が原因で、鼠径部リンパ節が腫れることもあります。

鼠径部皮下腫瘍、鼠径部皮下膿瘍

皮下に脂肪腫などの腫瘍や、粉瘤(アテローム)ができて、しこりを触れます。赤く腫れている場合は、感染を伴っている可能性があります。皮膚科や外科で治療します。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)

鼠径部痛症候群はサッカー選手で多くみられる病気で、運動すると鼠径部に痛みを感じます。しこりはありません。

精索静脈瘤

精索静脈瘤は、精索静脈が瘤状に拡張する病気で、鼠径部から陰嚢にかけて痛みがあります。陰嚢が腫れて痛い場合は、精巣上体炎などの泌尿器科疾患の可能性があります。

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みは何科ですか?

鼠径部にしこりがあり、押すと戻る場合は、鼠径ヘルニアの可能性が高いので、外科(ヘルニア外来)、消化器外科でご相談ください。

鼠径部にしこりがない場合や、押しても戻らない場合は他の病気の可能性も高いので、症状によって診療科を選ぶ必要があります。
整形外科の椎間板ヘルニア(全く別の病気です)と間違えることがあるので、ご注意ください。
鼠径部が赤く腫れて痛い場合は、皮膚疾患の可能性が高くなります。

鼠径部(足の付け根)のしこりや痛みを診断する検査は?

もし鼠径ヘルニアであれば、外科医が診察(感度75%、特異度96%)することで、ほとんどの場合は診断することができます。
立ち上がると鼠径部がぽっこり膨らみ、押すとクチュクチュっと戻る場合は、触っただけで診断が可能です。

鼠径部の膨らみがはっきりしない場合や、しこりが触れて押しても戻らない場合などは、他の病気の可能性を疑う必要があります。
超音波検査(感度86%、特異度77%)やCT検査(感度80%、特異度65%)などを併用して診断します。

超音波検査はすぐにできますので、診察室に常備してよく利用しています。
立った状態で負荷をかけて検査ができるので、多くの情報が得られ非常に有用です。

鼠径部のしこりが時々しか出ない場合は?

鼠径部のしこりが受診時にはっきりしないと、診断がつかない可能性が高くなります。
時々しかしこりが出ない方は、しこりが出ている状態で受診することをお勧めします。

鼠径部が赤く腫れて痛みますが、どうしたらいいですか?

赤く腫れて熱をもっている場合は、感染を伴っていることがほとんどです。
感染性粉瘤や蜂窩織炎などのことが多いので、早めに皮膚科に相談しましょう。

鼠径部ヘルニアとは?

鼠径部ヘルニアとは、鼠径部に生じるヘルニアのことです。

鼠径部ヘルニアは、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3種類に大きく分けられます。
穴が開いている場所の違いで分けています。

外鼠径ヘルニア(間接型)

外鼠径ヘルニアとは、その名の通り、鼠径部の外側(内鼠径輪)にできた穴から腸が脱出する鼠径ヘルニアです。

内鼠径輪から鼠径管を通って、陰嚢に向かって腸が飛び出てきます。
鼠径ヘルニアの種類の中で、最も多いタイプです。

内鼠径ヘルニア(直接型)

内鼠径ヘルニアとは、鼠径部の内側にできた穴から腸が脱出するタイプの鼠径ヘルニアです。

中年以降の男性や肥満の方に多く、通常、腹壁の脆弱化が原因です。
膀胱が一緒に脱出していることもあり、手術時は注意が必要です。

大腿ヘルニア

大腿ヘルニアとは、鼠径部よりやや尾側の大腿部(大腿輪)にできた穴から腸が脱出するヘルニアです。

痩せ型の女性に多く、大腿輪は狭いため、嵌頓するリスクが高いことが特徴です。

鼠径部(足の付け根)の構造と鼠径部ヘルニアの関係は?

立った状態で、鼠径部は腹腔内(お腹の中)の底に位置するので、腹腔内の内容物が鼠径部を圧迫します。

鼠径部周辺には主に4つの筋肉がありますが、それらの筋肉に覆われていないすき間が鼠径部にあります。
そのすき間は構造的に弱いため、圧に耐えきれなくなると、鼠径部から腸管や大網(腹腔内の脂肪)が皮下に脱出して、鼠径部ヘルニアが発症します。

松下 公治

松下 公治

この記事は院長松下が執筆しました。鼠径ヘルニア・虫垂炎の【日帰り】腹腔鏡手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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