
鼠径部(そけいぶ)って、体のどこのことですか?

鼠径部とは、太ももの付け根の前面で、下腹部との境目にあたる部分です。一般には「足の付け根」と呼ばれます。鼠径部の位置と中にある構造、股関節との違いを、ヘルニア外科医が図を使って解説します。
鼠径部(鼠蹊部、そけいぶ)とは?足の付け根のどこ?

鼠径部(そけいぶ)とは、太ももの付け根の前面で、下腹部との境目にあたる部分です。
左右に1か所ずつあります。
日常では「足の付け根」「Vライン」と表現されることもあります。
医学的には、腹壁(お腹の壁)と太ももの境界にあたる領域を指します。
目安になるのが、鼠径靭帯(そけいじんたい)です。
腰骨の出っ張り(上前腸骨棘)から恥骨に向かって斜めに走る靭帯で、この靭帯に沿った一帯が鼠径部です。
なお、鼠径部は足の付け根の「前面」を指します。
後ろ側(お尻側)は鼠径部とは言わず、殿部(でんぶ)と言います。
鼠径部の中には何がある?
鼠径部の内部には、次のような重要な構造が集まっています。
- 鼠径管(そけいかん):腹壁を斜めに貫くトンネル
- 精索(男性):精巣につながる血管や精管の束
- 子宮円索(女性):子宮を支えるひも状の組織
- 血管(大腿動脈・大腿静脈)
- 神経
- リンパ節
小さな範囲に多くの構造が密集しているため、「しこり」「痛み」「違和感」といった症状が出やすい部位です。
鼠径部のリンパ節はどこにある?
鼠径部のリンパ節(鼠径リンパ節)は、鼠径靭帯のすぐ下、太ももの付け根の皮膚の下に並んでいます。
足や陰部、お尻などからのリンパ液が集まる場所です。
普段は触れないことがほとんどですが、足のケガや感染などで腫れると、小さなしこりとして触れることがあります。
鼠径部と股関節の違いは?
鼠径部は体の表面の「場所」の名前で、股関節は骨と骨をつなぐ「関節」の名前です。
股関節は、骨盤と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ関節で、鼠径部の奥深くにあります。
そのため、股関節の病気でも鼠径部(足の付け根)に痛みを感じることがあります。
| 鼠径部 | 股関節 | |
| 何を指すか | 足の付け根の前面の領域 | 骨盤と大腿骨をつなぐ関節 |
| 位置 | 体の表面に近い | 鼠径部の奥深く |
| 主な病気 | 鼠径ヘルニア、リンパ節の腫れなど | 変形性股関節症など |
| 症状の特徴 | 膨らみやしこりを触れることが多い | 歩く・立ち上がるときに痛む。しこりはない |
鼠径部・鼠蹊部・鼡径部の違いは?
鼠径部・鼠蹊部・鼡径部は、どれも「そけいぶ」と読み、意味は同じです。
日本ヘルニア学会は、学術用語として「鼠径」を採用しています。
そのため、医療の現場では「鼠径部」「鼠径ヘルニア」と表記するのが一般的です。
「鼠径」の由来は?
「鼠」はネズミ、「蹊(径)」は小道を意味します。
精巣(睾丸)は、生まれる前にお腹の中でつくられ、鼠径管を通って陰嚢の中へ降りてきます。
この移動の様子や細い通り道が、ネズミにたとえられたことが由来と言われています(諸説あります)。
鼠径部にしこりや痛みがあるときは?
鼠径部のしこりで最も多い原因は、鼠径ヘルニア(脱腸)です。
立ったりお腹に力を入れたりすると膨らみ、横になったり押したりすると戻るのが特徴です。
ほかにも、大腿ヘルニア、リンパ節の腫れ、ヌック管水腫(女性)・精索水腫(男性)、脂肪腫などの皮下腫瘍が原因になることがあります。
しこりの硬さや痛みによる見分け方、何科を受診すればよいかは、次の記事で詳しく解説しています。
足の付け根(鼠径部)のしこり・痛みの原因は?足の付け根(鼠径部)や股関節のあたりにしこりを触れるとき、最も多い原因は鼠径ヘルニア(脱腸)です。 立つと膨らみ、押したり横になったりすると戻るのが特徴です。一方、押しても戻らないしこり、押すと痛いしこり、赤く腫れるしこりは、別の...
すぐに受診すべき症状は?
次のような場合は、嵌頓(かんとん)の可能性があります。
嵌頓とは、飛び出た腸がはまり込んで戻らなくなった状態で、腸が傷んでしまうおそれがあります。
- 膨らみが急に硬くなり、押しても戻らない
- 膨らみに強い痛みがある
- 吐き気・嘔吐、お腹の張りがある
これらの症状があるときは、様子を見ずに、すぐに医療機関を受診してください。
夜間や休日であれば、救急外来の受診をためらわないでください。
鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治りますか? 鼠径ヘルニア(脱腸)は、お腹の壁の弱い部分から、腸や脂肪などが飛び出してくる病気です。 足のつけ根(鼠径部)が膨らみ、立つと出てきて、横になると引っ込むのが特徴です。大人の鼠径ヘルニアは、自然に治ることはありません。タイヤのパ...
鼠径部ヘルニア(脱腸)とは?3つの種類

鼠径部に生じるヘルニアをまとめて、鼠径部ヘルニアといいます。
どれも一般に「脱腸」と呼ばれます。
違いは、腸が飛び出してくる「穴」の場所です。
- 外鼠径ヘルニア(間接型):鼠径部の外側寄りにある穴(内鼠径輪)から、鼠径管を通って陰嚢の方向へ出てくるタイプ。最も多く、子どもの鼠径ヘルニアもほとんどがこのタイプです。
- 内鼠径ヘルニア(直接型):鼠径部の内側寄りの、腹壁が弱くなった部分から出てくるタイプ。中高年の男性に多く、膀胱が一緒に飛び出していることもあります。
- 大腿ヘルニア:鼠径靭帯のやや下、太ももの付け根にある穴(大腿輪)から出てくるタイプ。中高年の女性、特に痩せ型の方に多く、嵌頓を起こしやすいため早めの手術が勧められます。
鼠径ヘルニア(脱腸)とは?鼠径ヘルニアは、足の付け根(鼠径部)にある腹壁のすき間から、お腹の中の腸や脂肪が皮膚の下に飛び出してしまう病気です。 一般には「脱腸」と呼ばれ、中高年の男性に多く見られます。 大人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。鼠径部はどこ? 鼠径...
なぜ鼠径部にヘルニアができやすい?
立った状態では、鼠径部はお腹の中(腹腔内)の底にあたります。
そのため、腸などの臓器の重みや腹圧が、鼠径部にかかりやすくなります。
鼠径部の周りは複数の筋肉で守られていますが、筋肉に覆われていない「すき間」があります。
このすき間は構造的に弱いため、腹圧に耐えきれなくなると、腸や大網(お腹の中の脂肪)が皮膚の下へ飛び出します。
腹腔鏡手術では、お腹の内側からこのすき間全体をメッシュで覆い、補強します。
まとめ
- 鼠径部とは、太ももの付け根の前面で、下腹部との境目にあたる部分(足の付け根)
- 鼠径部は体表の「場所」、股関節は奥にある「関節」の名前
- 鼠径部・鼠蹊部・鼡径部は同じ意味で、学術用語では「鼠径」を使う
- 鼠径部のしこりで最も多い原因は、鼠径ヘルニア(脱腸)
- 膨らみが戻らない、強く痛む、吐き気があるときは、すぐに受診を
よくある質問(FAQ)
Q:足の付け根は、医学用語で何と言いますか?
A:足の付け根の前面は「鼠径部(そけいぶ)」と言います。後ろ側(お尻側)は「殿部(でんぶ)」です。
Q:鼠径部は右と左、どちらにありますか?
A:鼠径部は左右に1か所ずつあります。鼠径ヘルニアは片側だけのこともあれば、両側に起こることもあります。
Q:鼠径部のリンパ節はどこにありますか?
A:鼠径靭帯のすぐ下、太ももの付け根の皮膚の下に並んでいます。腫れると小さなしこりとして触れることがあります。
Q:女性や子どもにも鼠径ヘルニアは起こりますか?
A:起こります。中高年の男性に多い病気ですが、女性や子どもにもみられます。女性では大腿ヘルニアが比較的多い点に注意が必要です。
Q:立つと鼠径部が膨らみ、横になると戻ります。痛くはありませんが、受診したほうがいいですか?
A:鼠径ヘルニアは、痛みがないことも多い病気です。自然に治ることはないため、痛みがなくても膨らみがある場合は一度受診して相談しましょう。何科を受診すればよいかは、こちらで解説しています。
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