「鼠径ヘルニアの手術後はどうなるのでしょうか?」
多くの方は初めての経験ですので、手術後の経過に不安を感じると思います。
ヘルニア外科医の松下が、鼠径ヘルニアの手術後についてわかりやすく解説します。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の経過
鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術後の経過について説明します。
ただし、術後の回復スピードは個人差が大きいので、以下は典型的な場合です。
手術当日、帰宅後
帰宅後は自宅で安静に過ごしてください。
ただし、無理のない範囲内で日常生活を行うことや、食事に大きな制限はなく、シャワーも可能です。
術後出血予防のため、飲酒は24時間控えてください。
麻酔の影響が残っていますので、車や自転車などの乗り物の運転は手術後24時間できません。
痛み止めを処方しますので、内服します。
手術翌日以降
手術翌日から日常生活の制限はありません。
ただし、手術後間もないので、体調が戻るまでに数日かかります。
実際に日常生活に戻るまで約2〜3日程度かかることが多いです。
溶ける糸で傷を縫うので、抜糸は不要です。
手術の翌日と約1週間後に電話で病状を確認し、経過をフォローします。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の仕事復帰はいつから?
鼠径ヘルニアの日帰り手術後は、仕事の内容によりますが、翌日から職場復帰が可能です。
しかし、体力や回復、痛みの程度は人それぞれで違います。
実際、平均すると3〜4日後から仕事復帰している人が多いです。
手術後なのであまり無理はしないで、数日余裕を持って休むことをお勧めしています。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の力仕事は?
腹圧がかかる力仕事や、激しい運動は1週間程度控えることを勧めています。
強い力がメッシュにかかると、メッシュがずれたりして、再発することがあります。
特にジャンプをすると腹圧がかかるので、やめておいた方がいいです。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の日常生活は?
手術後の日常生活や食事は制限していません。
体調に応じて、無理ない範囲で動いて結構です。
食事はできれば消化の良いものにしておいた方がいいです。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後は痛みますか?
鼠径ヘルニアの日帰り手術を腹腔鏡で行った場合、穴は5mmと小さいので、痛みは少なく、手術直後に歩けます。
リカバリー室から自分の個室に戻る時は、歩いて移動しています。
鼠径部切開法の場合、傷が4〜5cmと大きくなるので、痛みはやや強くなりますが、歩くことはできます。
しかし、痛みには個人差がありますので、大したことない人もいれば、結構痛くなってしまう人もいます。
日帰り手術にとって痛みが軽いことは非常に重要なので、最大限痛みを軽減するための工夫を行っています。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の合併症とは?
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後の合併症(併存症)で頻度がやや高いのが、漿液腫(しょうえきしゅ)です。
術後に再発したかのように腫れるので、驚いてしまう患者さんがいます。
漿液腫であれば心配はなく、水(浸出液)がたまっている状態ですので、自然吸収されるのを待ちます。
鼠径ヘルニア手術後の主な合併症
- 漿液腫・血腫:元々あった袋(ヘルニア嚢)に水(浸出液)や血がたまります。時間経過と共に自然に吸収されます。
- 創部感染:傷が化膿し赤く腫れます。抗菌薬や傷口を洗浄します。
- メッシュ感染:メッシュが感染すると難治性ですので、メッシュを取り除かなければならないことがあります。
- 慢性疼痛・違和感:従来の手術よりも腹腔鏡手術では痛みや違和感が少ないものの、時には痛みが続き、内服や注射などの治療が必要になることがあります。
- ヘルニアの再発:一般的には1-5%程度の再発が報告されています。体重を増やさないことが大切です。
鼠径ヘルニア(脱腸)手術後に再発することはありますか?
鼠径ヘルニア手術後に、ヘルニアが再発するリスクは1〜5%程度です。
メッシュの脇から腸管が脱出したり、メッシュがずれてしまうことで腸管が出てくることがあります。
そのため、当院では大きめのメッシュを広く敷くことや、プログリップメッシュというずれにくいメッシュを使用しています。
体重を増やさないことも、再発予防に重要です。

2023.01.01
鼠径ヘルニアの日帰り手術
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