「ヌック管水腫とはどんな病気でしょうか?」
女性の鼠径ヘルニアを診療していると、ヌック管水腫と関連していることがよくあります。
ヘルニア外科医の松下が、ヌック管水腫についてわかりやすく解説します。
ヌック管水腫とは?
ヌック管水腫とは、鼠径部(足の付け根)にあるヌック管に液体がたまる病気で、女性の病気です。
男性の場合の精索水腫(精索水瘤)に相当します。
1691年にNuck(ヌック)が最初に報告したので、nuck管水腫と呼ばれています。
鼠径ヘルニアの腸管が脱出する部分に、液体が溜まった袋ができていると考えると理解しやすいです。
生理周期に一致して症状が悪化する場合は、子宮内膜症と関連していることがあります。
ヌック管とは?ヌック管水腫の原因は?
ヌック管とは、胎児期において、女性の鼠径部にある管状の構造物のことです。
通常は妊娠7ヶ月頃に閉鎖します。
しかし、ヌック管が閉鎖されないまま残ることがあり、そこに液体が溜まってしまうことがヌック管水腫の原因です。
ヌック管水腫の症状は?
多くの人は、鼠径部に小さいしこりを触れて気づき、軽い痛みを伴うことがあります。
しこりが大きくなったり、小さくなったり変化するのが特徴で、手で押しても鼠径ヘルニアのように無くなりません。
ヌック管水腫は何科を受診すれば良いですか?
ヌック管水腫は外科(消化器外科)に受診すると良いです。
ヘルニア外来を行っている病院があれば、より最適です。
ヌック管水腫の診断は?
ヌック管水腫の診断に有用なのが超音波検査で、液体が溜まった嚢胞として確認できます。
鼠径ヘルニアと関連することも多く、鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアなどと鑑別するため、診察やCT検査なども併用して診断します。
腫瘍性病変の合併がないを確認することも重要です。
ヌック管水腫の治療は?手術が必要?
ヌック管水腫の治療は、手術するか、経過観察するかのどちらかです。
ヌック管水腫は症状が軽度で、液体が溜まっているだけであれば経過観察も可能です。
しかし、症状が強い場合や、子宮内膜症などが疑われる場合は、診断も兼ねて手術で摘出します。
手術方法は、嚢胞をまるごと摘出し、内鼠径輪の開大があれば、鼠径ヘルニアと同じように修復します。
水腫の形態や分布は一人ひとり異なりますので、超音波検査やCT検査で全貌を把握した上で手術します。
嚢胞を摘出する方法は様々で、腹腔鏡を使ったり、鼠径部を切開したり、両方を併用することもあります。
摘出した嚢胞は、病理(顕微鏡)検査に提出し、子宮内膜症や悪性(がん)の所見がないかを確認します。
※当院でヌック管水腫の手術は行っていませんので、ご注意ください。

2023.01.01
鼠径ヘルニアの日帰り手術
鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術 日帰り手術とは、手術したその日に帰宅できる手術のことです。 日常生活を続けたまま手術を受けられることが大きなメリットで、費用対効果に優れていることもあり欧米では既に一般的です。鼠径(そけい)ヘルニアの治療は、日本では93.5%が入院手術(日帰り手術はたっ...