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外科医と経営者の視点

患者の生活を基点にした医療設計

医療を考えるとき、
私たちは無意識のうちに「医療の都合」から出発している。

この検査が必要だから。
この順番が安全だから。
この日程が標準だから。

それらは、
医療として正しい判断であることが多い。
だが同時に、
患者さんの生活とは別の軸で組み立てられていることも少なくない。

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開業し、医療のかたちを一から設計する立場になってから、
私が最も強く意識するようになったのが、
「この医療は、患者さんの生活の中にどう組み込まれるのか」
という視点だった。

医療は、患者さんの人生の一部である。
にもかかわらず、
その生活の全体像は、意外なほど医療設計の外に置かれている。

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病院勤務時代、
私自身も患者さんの生活を「背景」として捉えていたに過ぎなかった。

仕事をしている。
家族がいる。
通院が大変そうだ。

それらは配慮の対象ではあっても、
医療の設計を左右する基点ではなかった。

だが今は、
考え方が逆になった。

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まず考えるのは、
この患者さんはどんな生活を送っているのか、ということだ。

仕事の時間帯。
家族との関係。
一日のリズム。
何を失うと、生活が立ち行かなくなるのか。

その上で、
「医療として何ができるか」を組み立てる。

順番が変わるだけで、医療のかたちは大きく変わる。

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患者さんの生活を基点にするということは、
患者さんの希望をすべて優先するという意味ではない。

医学的に譲れない線はある。
安全性を下げていいわけではない。
無理な要求に応えることでもない。

大切なのは、生活と医療の接点を探すという姿勢だ。

どこまでが調整可能で、どこからが難しいのか。
その境界を、できるだけ言葉にする。

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ただし、
患者さんの生活を基点にすると、
医療者が手放さなければならないものもある。

標準に当てはめれば、判断は楽になる。
前例に従えば、説明は短くて済む。

「このやり方が普通だから」
という言葉は、医療者を守ってくれる。

だが、
生活を基点にする医療では、そうはいかない。

一人ひとり違う生活に合わせて医療を組み立てるということは、
判断の責任をより個別に引き受けるということだからだ。

正解が最初から用意されているわけではない。
選択の理由を、その都度、考える必要がある。

生活基点の医療は、医療者にとって優しい医療ではない。
むしろ、覚悟が必要となる医療だと思っている。

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日帰り手術の設計は、
まさにこの視点を突きつけてくる。

医療的には可能でも、生活的には無理な人がいる。
逆に、
入院という選択が生活を壊してしまう人もいる。

ここで重要なのは、「どちらが正しいか」ではない。

その人の生活にとって、
どの医療が現実的かという問いだ。

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患者さんの生活を基点にすると、
医療者側の負担は、むしろ増えることがある。

一律に決めた方が楽だ。
標準に当てはめた方が早い。
説明も簡単だ。

それでも私は、
この設計をやめるべきではないと思っている。

なぜなら、
生活を無視した医療は、結果的に継続できないからだ。

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術後の回復が早くても、
仕事に戻れなければ、生活は崩れる。

医療的には成功でも、生活が破綻すれば、
その医療は患者さんにとって「良い医療」にはならない。

医療の評価軸は、治療成績だけでははかれない。

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患者さんの生活を基点にする医療は、
「優しい医療」ではない。

むしろ、
現実に厳しい医療だと感じている。

なぜなら、
患者さんの生活は多様で、簡単に一般化できないからだ。

それでも、
その複雑さから目を背けないことが、
これからの医療には必要だと思う。

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経営者として医療を考える今、
この視点はさらに重みを増している。

医療は、続かなければ意味がない。
患者さんの生活に馴染まない医療は、いずれ選ばれなくなる。

患者さんの生活を基点にした設計は、
理想論ではなく、持続していく条件にもなる。

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患者さんの生活を基点にする医療のデザインは、
完成形を持たない。

患者さんが変われば、答えも変わる。
社会が変われば、最適解も変わる。

だからこそ、
考え続ける必要がある。

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このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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