「日帰りで本当に大丈夫なのか」
開業当初、この問いを最も多く向けてきたのは、
患者さんではなかった。
同業の医師たちだった。
その問いは、批判ではなかったと思う。
私自身が、同じ問いを自分に向け続けていたからだ。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
日帰り手術を「安全に成立させる」とはどういうことか。
最初、私はこの問いを、
技術の問題として捉えていた。
腹腔鏡の精度を上げる。
手術時間を短縮する。
出血を最小限に抑える。
それらは確かに重要だ。
だが実際に始めてみると、
技術以外の部分に、より多くの課題があることが見えてきた。
日帰り手術を支えるのは、
手術室の中だけではない。
手術室の外の設計が、安全の大半を決めていた。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
まず変えたのは、患者さんの選び方だった。
日帰り手術は、すべての患者さんに適しているわけではない。
全身状態、既往歴、生活環境、家族のサポート。
これらを総合的に判断し、
日帰りに適しているかどうかを、
初診の段階で丁寧に見極める必要があった。
病院勤務時代は、
「入院」という枠がすべてを吸収してくれた。
日帰りでは、その枠がない。
だからこそ、
誰を対象にするのかの線引きを、
言語化しなければならなかった。
最初は、この線引きに最も時間がかかった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
次に変えたのは、説明の構造だった。
日帰り手術では、説明の曖昧さが、
そのまま患者さんの不安と術後トラブルにつながる。
入院という枠の中では、
何かあれば医療者がいる、という前提がある。
日帰りでは、その前提がない。
だからこそ、
どこまでが正常な経過で、
どこからが連絡すべき状態なのかを、
患者さん自身が判断できるように説明する必要があった。
私が取り組んだのは、説明を「一度で終わらせない」ことだった。
診察室での説明。
看護師による補足と確認。
持ち帰れる「日帰り手術のしおり」。
術後のフォローアップ連絡。
情報を分散させ、
患者さんが自分のペースで理解できる仕組みをつくった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
三つ目に変えたのは、術後の時間設計だった。
日帰り手術では、術後に患者さんを一定時間、
院内で観察する時間が必要だ。
その時間をどう設計するか。
ただ「休んでもらう」だけでは足りない。
何を確認するのか。
誰が確認するのか。
どの状態なら帰宅できるのか。
これらを明文化し、
スタッフ全員が同じ基準で動ける形を整えた。
「なんとなく大丈夫そう」ではなく、
「この基準を満たしたから帰宅可能」という判断に変えた。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
四つ目は、緊急時の連絡体制だった。
帰宅後に何かが起きたとき、
患者さんはどこに連絡すればいいのか。
誰が対応するのか。
どこまでをクリニックで引き受け、
どこからを救急に委ねるのか。
この設計がなければ、
日帰り手術は「送り出したら終わり」になってしまう。
帰宅後のフォローこそが、
日帰り手術の安全を担保する最後の砦だと、
今は確信している。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
これらの変化は、
どれも華やかなものではない。
新しい技術を導入したわけでも、
画期的な仕組みをつくったわけでもない。
言葉にすれば、地味だ。
だが、現場では確かな変化があった。
患者さんが安心して帰っていく。
スタッフが迷わず動ける。
術後のトラブルに、落ち着いて対応できる。
「日帰りで本当に大丈夫なのか」
その問いへの答えは、
技術の話ではなかった。
誰が、何を、どこまで引き受けるのかという、
設計の話だった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
変えたことを振り返ると、
共通していることが一つある。
「入院という枠が代わりに引き受けていたもの」を、
一つひとつ言語化し、形にし直す作業だったということだ。
入院は、多くのことを暗黙のうちに解決してくれていた。
観察、対応、安心、責任の所在。
日帰りでは、それらを意識的に設計しなければならない。
その設計を、誰かに委ねることはできない。
判断した人間が、引き受けるしかない。
それが、日帰り手術を始めて、
私が最初に学んだことだった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴ります。
外科医と経営者としての判断 〜医療は、誰が引き受けているのか〜 医療の「正しさ」は、本当に現場を支えているのだろうか。外科医として日帰り手術に取り組み、同時に理事長として医療法人の経営を担う中で、「誰が判断を引き受けているのか」という問いに行き着いた。判断から問い直す、医療の本質...
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は当院に相談を!
大宮駅から徒歩3分にある埼玉外科クリニックでは、腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っています。
当院は最難関の内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)の資格を持ったヘルニア外科医による腹腔鏡手術が受けられる、日本でも数少ない外科クリニックです。
ヘルニア外科医の院長松下が、責任持って手術を行います。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は、まずは当院のヘルニア外来に受診してご相談ください。
電車でお越しの方
JR大宮駅西口より徒歩3分
車でお越しの方
当ビル1階入口に駐車場(1台、無料)
満車時はコインパーキング(有料)をご利用ください
埼玉外科クリニック鼠径ヘルニア日帰り手術センター
〒330-0854
埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-268エイコービル3階
048-650-2555(鼠径ヘルニア専門外来の予約専用)
診療時間:9:00〜17:30【完全予約制】
定休日:日曜・祝日
受付開始 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
午前 8:50〜 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 休 |
午後 13:45〜 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 休 |
















