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外科医と経営者としての判断

問い続けることが、判断を引き受けた者の責任だ

序章に、こんな言葉を書いた。

「先生が一番いいと思う方法でお願いします」

診察室でそう言われるたびに、私は戸惑う。
「一番いい方法」が、何を意味するのかを、知っているからだ。

この問いから話を始めると書いて、
21本の記事を書いてきた。

読み返すと、答えらしい答えは、どこにもない。

それでいい。
むしろ、それが正直なところだと思っている。

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ここまで書いてきたことを、振り返る。

入院前提の医療を疑い、
日帰り手術という形を選んだこと。

標準化を盾にしていた自分に気づいたこと。
説明責任を、守りの道具にしていたこと。
「患者中心」を掲げながら、何を中心にしていたのかを問い直したこと。

現場を設計し、チームを整え、
失敗を次の設計のヒントにしてきたこと。

経営を知らないまま判断していたこと。
理想と経営を対立させていたのは、自分自身だったこと。
数字から目を背けることで、何かを守ろうとしていたこと。

外科医の判断と、経営者の判断がぶつかるたびに、
どちらかに逃げずに引き受けてきたこと。

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これらはすべて、
答えを出すための歩みではなかった。

問いを深めるための、
判断の積み重ねだった。

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医療は、完成しない仕事だ。

安全性を高めれば、手続きが増える。
標準化を進めれば、個別性がこぼれ落ちる。
効率を上げれば、余白が失われる。

何かを良くすると、
別の何かが、問いとして立ち上がる。

かつて私は、
医療には理想の形があると信じていた。

安全で、効率的で、
納得感があり、誰もが満足する医療。

それを目指して改良を重ねれば、
いつか辿り着けると思っていた。

だが今は、違う。

完成しないからこそ、医療は人の仕事であり続ける。
そして、完成しないからこそ、問い続けるしかない。

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問いを手放した瞬間に、
医療は「考えなくていいもの」になる。

決まった手順。
決まった判断。
決まった説明。

一見すると楽に見える。
だがそれは、
誰かが考えることを、肩代わりしている結果だ。

問いを持ち続けることは、不安を残すことでもある。

分からないまま進む。
迷いを抱えたまま判断する。
正しさを確信できないまま、引き受ける。

決して心地よい状態ではない。

それでも、
医療はその不確かさの中でしか、成立しない。

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問い続けるとは、
決断を先送りすることではない。

決断を一度で終わらせない、という姿勢だ。

決めた後も、振り返る。
疑う。
修正する。

その循環を、止めないこと。

日帰り手術も、経営も、
チームの設計も、判断の言語化も、

すべては「問い続けなければ、持続できないもの」だった。

問いを止めた瞬間、
それらは形式だけを残し、中身を失う。

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外科医として、経営者として、
私は何度も「答えが出ない判断」に向き合ってきた。

どちらを選んでも、何かを失う。
どちらを選ばなくても、別の問題が生まれる。

その中でできるのは、
「今はこれを選ぶ」と決めることだけだった。

その選択が正しかったのかどうかは、
今もまだ、分からないものがある。

だが、その問いを消さずに持ち続けることが、
外科医として、経営者として、
私が引き受けてきた責任だと思っている。

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このブログを読んでくれた人に、
一つだけ伝えたいことがある。

問いを、置き去りにしないでほしい。

どんな立場で医療に関わるとしても。
医師であっても、看護師であっても、
経営者であっても、患者さんであっても。

答えは、その都度、変わっていい。
昨日の正解が、今日の違和感になることもある。

それでいい。

問い続ける限り、医療はまだ動いている。
迷い続ける限り、判断は生きている。

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「先生が一番いいと思う方法でお願いします」

この言葉を、私はこれからも診察室で聞くだろう。

そのたびに戸惑い、
「一番いい方法」とは何かを、問い直すだろう。

その問いに、完全な答えは出ない。

だが、問い続けることが、
私の医療への返答だ。

外科医として。
経営者として。
日帰り手術のクリニックに立ち続ける人間として。

判断を引き受け、問い続ける。

それが、これからも変わらない、私の選択だ。

(終)

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このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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