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日帰り手術が浮かび上がらせた医療の輪郭

日帰り手術を始める前、
私自身がいちばん不安に感じていたのは、
「本当に現場は回るのだろうか」という点だった。

患者さんは安心できるのか。
スタッフの負担は増えないのか。
医師としての責任は、むしろ重くならないか。

理屈では説明できても、
実際にやってみなければ分からないことばかりだった。

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最初に変化を感じたのは、患者さんの反応だった。

「入院しなくていい」ことを説明すると、
驚く方もいれば、ほっとした表情を見せる方もいる。
中には、不安をはっきり口にされる方もいる。

だからこそ、説明にかける時間は確実に増えた。

どんな手術なのか。
どこまでが正常な経過で、
どこからが注意すべきサインなのか。
帰宅後、誰に、どのように連絡すればいいのか。

入院しているときには、
多少曖昧なままでも問題にならなかった説明が、
日帰りでは通用しない。

その結果、
患者さん自身が理解しようとする姿勢を、
以前よりもはっきりと感じるようになった。

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次に変わったのは、医師としての意識だった。

「家に帰す」以上、
術後の経過を具体的に想定しきれていなければならない。
楽観も、過剰な慎重さも許されない。

どの患者さんが日帰りに向いているのか。
どこにリスクがあるのか。
その判断を、これまで以上に言語化する必要があった。

不思議なことに、
そのプロセスを重ねるうちに、
手術そのものへの理解が深まっていく感覚があった。

「何となく安全」ではなく、
「どこまでが安全なのか」を考えるようになったからだと思う。

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医療現場にも、少しずつ変化が現れた。

スタッフの負担が減ることで、
一人ひとりの患者さんに対して、
より丁寧なケアができるようになった。

スタッフ間のコミュニケーションも変わった。
「この患者さんにとって何が最善か」を、
事前に共有する場面が増えた。

もちろん、すべてがうまくいったわけではない。

説明が不十分だったと反省したケースもある。
フォロー体制の甘さを痛感したこともある。
「やはり入院にすべきだった」と感じたこともあった。

それでも、
その一つひとつが、
次の改善につながっていった。

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日帰り手術を通じて私が感じたのは、
医療が効率化された、というよりも、
医療の輪郭がはっきりした、という感覚だ。

誰が、いつ、何を判断し、
何を引き受けているのか。

入院という仕組みの中では見えにくかった責任の所在が、
日帰りでは、良くも悪くも浮かび上がる。

それは、
医師にとっては緊張を伴う一方で、
医療を「自分たちの手に取り戻す」感覚でもあった。

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日帰り手術は、万能な解決策ではない。
すべての患者さんに向いているわけでもない。

ただ、
「こういう形もあり得る」
という選択肢が一つ増えたことで、
医療の見え方が少し変わった。

入院するか、しないか。
その二択ではなく、
どのような設計なら、その人にとって安心なのか
を考えるようになった。

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医療は、
大きな改革がなくても、
現場の判断の積み重ねによって、
少しずつ姿を変えていく。

その変化は、
派手ではないが、
確かに手応えのあるものだった。

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このブログ「外科医と経営者の視点」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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