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外科医と経営者の視点

経営を知らないまま、医師が判断するということ

多くの医師は、経営を知らない。

それは怠慢でも、無関心でもない。
むしろ、長い間、それは合理的な選択だった。

医師は、目の前の患者に集中すべきだ。
経営は、別の誰かが担えばいい。

その役割分担は、
医療を安定して回すために、確かに機能してきた。

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医師になるまでの道のりを振り返れば、
経営を学ばない理由は、はっきりしている。

覚えるべき医学知識。
身につけるべき手技。
積み重ねる臨床経験。

それだけで、
時間も思考も、ほとんど使い切ってしまう。

そこに、
経営や数字の話が入り込む余地は、ほとんどなかった。

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さらに、
経営はどこか、
医療の価値と相反するものとして語られてきた。

お金の話をする医師は、どこか信用できない。
効率を語る医師は、患者を見ていない。

そうした空気の中で、経営を学ばないことは、
医師としての純度を保つ行為でもあった。

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病院という仕組みも、
医師が経営を学ばなくても成立するように、設計されていた。

診療に集中する医師。
運営を担う管理部門。
制度に基づく報酬。

個々の医師が全体を知らなくても、
医療は回っていた。

だから、
経営を学ばないという選択は、
個人にとっても、組織にとっても、
合理的だった。

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だが、
その前提が、少しずつ崩れ始めている。

医療の高度化。
人手不足。
制度の複雑化。

現場の判断が、
組織の持続性に直結する場面が、増えてきた。

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経営を知らないまま、判断を続けると、
何が起きるか。

「現場では正しいが、続かない医療」が生まれる。

たとえば、
目の前の患者のために無理を重ねる診療体制。
赤字でも「必要だから」と続けられる業務。
特定の医師の献身に依存した当直や外来。

その判断一つひとつは、間違っていない。
むしろ、医師としては誠実だ。

だが、
その積み重ねが人を疲弊させ、
引き継ぎを困難にし、
ある日突然、続けられなくなる。

個々の医師は懸命に働いているのに、
組織は、静かに消耗していく。

そのズレに、誰も気づかないまま。

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ここで、こんな反論が浮かぶかもしれない。

「経営を学ばないことは、無責任だと言いたいのか?」

そうではない。

経営を学ばないこと自体が、
無責任だったわけではない。

むしろ、
学ばなくても責任を果たせるように、
医療の仕組みが設計されてきた。

判断の結果は、
管理部門が吸収し、
制度が調整し、
個々の医師からは見えない場所で処理されてきた。

だから、
医師が経営を知らないまま判断することは、
個人の問題ではなく、
構造の問題だった。

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ただ、その構造が、
今は機能しにくくなっている。

判断の影響が、
現場の外にとどまらず、
人材、時間、
そして組織の存続にまで及ぶようになった。

それでもなお、
影響範囲を知らないまま判断を続けるなら、
結果として、
誰も引き受けていない責任が生まれてしまう。

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私自身、外科医として働いていた頃は、
経営なんて「知らなくてもいいもの」だと思っていた。

だが、開業し、
判断の結果が、そのまま組織の行方に影響する立場になって、
考えが変わった。

経営を学ばないという選択は、
判断の影響範囲を知らないまま、意思決定を引き受けることなのだと、
気づいたからだ。

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経営を学ぶとは、利益を最大化することではない。
医療を、ビジネスに変えることでもない。

それは、
自分の判断が、どこまで影響するのかを知ることだ。

人に、どう影響するか。
時間に、どう影響するか。
「続ける力」に、どう影響するか。

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医師が経営を学ばないという選択は、
医師を守ってきた。

だが同時に、
医師を「判断の結果から切り離す」役割も果たしてきた。

その構造が、
今、限界を迎えつつある。

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もちろん、
すべての医師が経営者になる必要はない。

だが、
自分の判断が、
どの層に、どこまで届いているのかを知らないままでは、
医療は、ますます分断されていく。

現場と運営。
理想と現実。
医療と数字。

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経営を学ぶという選択は、医師に、新しい責任を課す。

だがそれは、
医師から医療を奪うものではない。

むしろ、
医療を続ける力を、
医師の手に取り戻す行為なのだと、
今は感じている。

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このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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