傷を早くきれいに治すのに大切なことは?
傷(きず)を早くきれいに治すのに最も大切なことは、何でしょうか?
それは、傷を乾かさないことです。
20年ぐらい前には、傷は乾かして治すのが一般的でした。
ケガをしたら、消毒して、ガーゼを当てて、乾かしてかさぶたにして治していました。
消毒する時やガーゼを剥がす時が痛くて、傷の治りが汚くなってしまうのが欠点でした。
それとは全く逆の方法、乾かさないで治す方法「湿潤療法」が行われるようになり、今では創傷被覆材(キズパワーパッドなど)が市販されています。
正しい傷の治し方について解説します。
自己処置できる傷と、病院で処置が必要な傷を区別する方法
自己処置できる傷と、病院で処置が必要な傷は、どのように区別できるのでしょうか?
大抵は今までの経験から、これなら病院にかからなくても自然に治りそうとわかると思います。
その感覚は非常に大切です。
どうしたらいいかわからない傷は、迷わず受診した方がいいでしょう。
傷の種類
- 擦過傷(さっかしょう):すり傷。転んだりして、擦りむいた傷。
- 切創(せっそう):切り傷。包丁やガラスなどで切った傷。
- 挫創(ざそう):何かにぶつけることで、皮膚が割れてさけた傷。
- 咬創(こうそう):かみ傷。犬などにかまれた傷。
- 刺創(しそう):刺し傷。釘などの鋭利なものが刺さった傷。
代表的な傷の種類を挙げました。
深い傷は病院で処置が必要です。
特に、切創、挫創、咬創、刺創は深いことが多く、病院で処置した方がいい傷です。
汚染が強い時、洗ってもきれいにならない時、出血が止まらない時はすぐに病院に受診しましょう。
病院では麻酔下での処置、傷の縫合、感染予防薬の投与ができます。
出血が止まらない時の止血方法
出血が止まらない時は、出血している部位を指で直接圧迫するのが最も効果的です。
腕や指の根元を縛る人がいますが、虚血となってしまうためお勧めしません。
一方、浅い傷は自分でも処置できることが多く、その代表が擦過傷です。
キズパワーパッドで傷を早くきれいに治す方法は?
浅い擦過傷であれば、わざわざ病院に受診しないでも、放っておけば治りますが、より早くきれいに治す方法があります。
キズパワーパッドなどの創傷被覆材を使った治し方を説明します。
既に傷が痂皮(かさぶた)で覆われている場合も、その上から貼ると同じように治せます。
傷を早くきれいに治す手順
- 傷を洗う:水道水でよく洗い、砂などの異物は取り除きます。
- 傷を拭く:水分を拭き取ります。
- 傷にキズパワーパッドを貼る:傷よりもやや大きめのキズパワーパッドを貼ります。
- キズパワーパッドを貼り替える:キズパワーパッドが白くふやけてきたら、剥がして、水道水で洗って、貼り替えます。
- キズパワーパッドを剥がす:キズパワーパッドがふやけなくなり、薄いピンクの皮膚で覆われたら、剥がして終わりです。
キズパワーパッドとは?
傷に貼る市販の創傷被覆材と呼ばれる絆創膏です。
ハイドロコロイドは医療現場でも、よく使っている素材です。
防水なので、水仕事にも便利で、私は常備しています。
» キズパワーパッド(ジョンソン・エンド・ジョンソン公式サイト)
素材にハイドロコロイドを使用していれば、他のメーカーの絆創膏でも代用できます。
キズパワーパッドを使う時の注意点
- 傷が感染した時は病院に受診しましょう。傷が感染すると、赤く腫れて熱くなり痛くなります。
- 感染を防ぐには、水道水でよく洗うことが大切です。消毒は勧められていません。
- 止血機能はないので、圧迫し止血してから貼ります。
- 傷を寄せる機能もないので、傷がぱっくり割れてしまった時は、病院で処置しましょう。傷口がきれいに合わさっていることが、大切です。
- 傷からは、透明から薄い黄色の浸出液が出てキズパワーパッドが白くなります。皮膚まで白くふやけてしまうと傷の治りが悪くなるので、キズパワーパッドを貼り替えましょう。最初は1日1回以上貼り替えます。
- キズパワーパッドの周囲から浸出液が漏れる時は、キズパワーパッドを大きくするか、交換の頻度を増やすといいです。
- 傷が悪化していると感じた時は、病院に受診しましょう。
なぜ傷を乾かしてはいけないの?
浸出液には傷を治す成分が含まれています。
そのため、傷が浸出液にふれた状態にしておくと、傷が治りやすくなります。
逆に消毒液は細菌だけでなく、正常な組織も壊してしまい治りを妨げる作用があります。
そのため、傷を消毒するのではなく、水道水でよく洗い、菌を洗い流すことが重要です。
少なくとも日本の水道水はきれいですので、水道水で洗うことで感染することはありません。
※このページでは創傷(そうしょう)のことを、日常語として使われる傷(きず)と記載しました。医学用語としての創(開放性損傷)と傷(非開放性損傷)は区別されていますが、わかりやすくするために、不正確な用語を使用している部分があります。
※当院で傷の診療は行っていませんので、ご注意ください。