鼠径ヘルニア日帰り手術センター 大宮駅徒歩3分

ネット
予約
鼠径ヘルニア
日帰り手術
初診の方へ
アクセス
外科医と経営者としての判断

省こうとして、初めてわかった非効率の意味

「なぜこんなに遠回りなのだろう」

医療の現場で働いていると、
そう感じる瞬間が何度もある。

同じ説明を繰り返す。
確認の手順が長い。
判断までに時間がかかる。

非効率だと分かっていながら、
変えられない空気がある。

開業する前の私は、その非効率を、
「仕方のないもの」として受け入れていた。
同時に、「いつか変えたい」とも思っていた。

だが開業し、医療を運営する側に立ってから、
その見方は変わった。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

最初に変えようとして、失敗した。

日帰り手術を中心にしたクリニックを設計する中で、
私は「無駄に見える手順」をいくつか省こうとした。

確認の工程を減らす。
書類を簡略化する。
説明の一部を省略する。

効率が上がるはずだった。
だが実際には、別の場所でほころびが出た。

患者さんの不安が増えた。
スタッフが迷う場面が増えた。
想定外の問い合わせが増えた。

そのとき初めて気づいた。
省いた手順は、無駄ではなかった。
誰かの何かを、静かに守っていたのだ。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

医療が非効率になりやすいのは、
やる気や能力の問題ではない。

医療は「失敗を極端に嫌う」仕事だからだ。

一度の判断ミスが、取り返しのつかない結果を招く。
その前提がある以上、医療は安全側に倒れる。

確認を重ねる。
冗長な手順を残す。
判断を先送りする。

その積み重ねが、
外から見ると非効率に映る。

だがその非効率の多くは、
ある種の恐怖と、責任と、歴史の結果として、
今の形を取っている。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

非効率には、二種類ある。

意味のある非効率と、
惰性で残っている非効率だ。

前者は守るべきだ。
後者は見直す余地がある。

だが現場では、その区別がなかなかつかない。

理由は一つだ。
非効率が言語化されていないからだ。

なぜこの手順が必要なのか。
どのリスクを避けているのか。
何を守るための時間なのか。

それが説明されないままでは、
非効率はただの「我慢」になる。

我慢は、改善につながらない。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

非効率のコストに、目を向けてみる。

非効率は、消えてなくなるわけではない。
必ず、誰かがその代償を払っている。

待ち時間として、患者さんが払っていることがある。
時間外労働や疲弊として、医療者が払っていることがある。
改善の余力を失う形で、組織が払っていることもある。

「安全のため」として正当化されやすい非効率は、
誰を守るためのものか、
誰に負担を押し付けているのかが、
十分に語られないまま残る。

その問いを立てずに「非効率だから変える」と言うと、
守られていた誰かが、守られなくなる。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

医療の仕組みが「人を信用しない」ように見えるのも、
同じ構造から来ている。

手順は細かく決められ、記録は求められ、例外は嫌われる。

だがそれは、人が信用できないからではない。

人は必ず揺らぐ存在だという前提を、
仕組みが引き受けているからだ。

疲れる。迷う。勘違いする。判断を急ぐ。

どれも、優秀な医療者であっても避けられない。

だからこそ、チェックが入り、
手順が決まり、記録が残される。

問題は、その仕組みが「思考」まで代替してしまうときに起きる。

「ルールだから」という言葉が判断の理由になった瞬間、
現場の思考は止まる。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

私が目指しているのは、非効率をなくすことではない。

説明できる非効率にすることだ。

この時間は、何を守るためのものか。
この手順は、どのリスクを引き受けているのか。
この確認は、誰の不安を和らげるためにあるのか。

それが言語化され、共有されていれば、
現場は納得して動ける。

納得のある非効率は、改善の出発点になる。
説明できない非効率だけが、ただの消耗になる。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

開業して実感したのは、
効率化とは「削ること」ではないということだった。

何を守るために、何を残すのか。
何を手放せば、誰かに負担が移るのか。

その問いを持ちながら、
一つひとつを丁寧に見直していく作業だ。

「非効率に見えるものが、誰かを守っている」

そのことを知った上で変えるのと、
知らないまま削るのとでは、
現場に残るものが、まったく違う。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

医療の非効率は、
誰を守り、誰に負担を押し付けているのか。

その問いを手放さない限り、
改善は現場を壊さずに済む。

そして、その問いを持ち続けることが、
経営者として、外科医として、
私が今も大切にしていることの一つだ。

– – – – – – – – – – – – – – – – – –

このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

関連記事

PAGE TOP