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外科医と経営者の視点

医療は、完成しない仕事である

医療には、完成形があるのだろうか。

この問いは、
医療に長く関わるほど、答えにくくなっていく。

新しい技術が生まれる。
制度が変わる。
社会の価値観が移り変わる。

どれほど努力しても、
医療は「ここまで来れば十分だ」とは言わせてくれない。

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かつて私は、
医療には理想の形があるのだと、どこかで信じていた。

安全で、
効率的で、
納得感があり、
誰もが満足する医療。

それを目指して改良を重ねていけば、
いつか辿り着けるのではないか。

だが現場に立ち続ける中で、
その考えは、少しずつ揺らいでいった。

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医療は、改善すればするほど、新しい課題を生む。

安全性を高めれば、手続きが増える。
標準化を進めれば、個別性がこぼれ落ちる。
効率を上げれば、余白が失われる。

何かを良くすると、
別の何かが、問いとして立ち上がる。

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完成しないということは、失敗なのだろうか。

私は、そうは思わなくなった。

むしろ、
完成しないからこそ、
医療は人の仕事であり続ける。

すべてが決まっていて、
すべてが自動化され、
迷いが一切存在しない医療。

それは、
医療のようでいて、
医療ではない。

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医療の現場には、必ず判断がある。

どこまで介入するのか。
どこで止めるのか。
何を優先するのか。

その判断は、
どれほど制度や指針が整っても、消えることはない。

判断が残り続けるという事実こそが、
医療が完成しない理由だ。

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第1部からここまで、
私は繰り返し「判断」という言葉を使ってきた。

判断を引き受ける仕事。
二つの判断を引き受ける生き方。
価値をつくるという判断。

それらはすべて、
医療が完成しない仕事であることを、前提にしている。

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もし医療に完成形があるのだとしたら、
判断は不要になる。

マニュアル通りに進めればいい。
結果は常に同じになる。

だが現実には、
患者は一人ひとり違い、生活も、価値観も異なる。

その違いを前にして、
判断を放棄することはできない。

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医療が完成しない仕事であるということは、
医療者にとって、負担でもある。

常に考え続けなければならない。
迷い続けなければならない。
正しさを、更新し続けなければならない。

だが同時に、
それは、
医療が人の営みであり続ける証でもある。

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完成しない仕事には、終わりがない。

だからこそ、
「どこまでやるのか」
「どう続けるのか」
という問いが重要になる。

完璧を目指せば、必ず誰かが疲弊する。
諦めすぎれば、医療は形骸化する。

その間で、折り合いをつけ続ける。

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経営者として医療を見るようになってから、
私は完成を目指すよりも、
壊れない形を探すようになった。

理想を、一度で実現しようとしない。
少しずつ調整する。
失敗を前提に、設計する。

完成しないからこそ、続けられる。

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医療は、
未完成であることを、恥じる必要はない。

むしろ、
未完成であることを自覚している医療だけが、
次の一歩を踏み出せる。

「まだ足りない」
「まだ分からない」
「まだ考える余地がある」

その感覚を、失わないこと。

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医療は、完成しない仕事である。

だから、
問い続けるしかない。

完成を目指すためではなく、
立ち止まり、考え続けるために。

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このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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