大病院を離れることを、
誰かに相談したとき、
ほとんど全員が同じ反応を示した。
「もったいない」
指導医もいる。
設備も整っている。
症例数も豊富だ。
なぜ、そこを離れるのか。
その問いに、私はうまく答えられなかった。
理由が言葉になっていなかったからではない。
言葉にすると、あまりにも地味だったからだ。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
外科医として病院に勤務していた頃、
私には「違和感」が積み重なっていた。
なぜ、この患者さんは入院しなければならないのか。
なぜ、この説明で本当に十分なのか。
なぜ、「念のため」という言葉で、思考が止まってしまうのか。
どれも小さな問いだ。
だが、その問いを現場で正面から扱える場所が、
私にはなかった。
忙しさの中で、違和感に気づいても、
深く考えないまま通り過ぎる。
それが「仕方のないこと」だと、
自分に言い聞かせてきた部分もある。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
組織の中にいると、判断は分散される。
入院の方針は、病棟のルールがある。
説明の仕方は、先輩のやり方がある。
手術の手順は、指導医の流儀がある。
それは悪いことではない。
むしろ、若い医師が一人で潰れないための、
大切な仕組みだったと今も思う。
だが年月が経つにつれて、
その仕組みの中で何かが変わっていった。
「これが正しい」と思っている判断ではなく、
「これで問題が起きない」という判断をするようになっていた。
気づいたとき、私はずいぶん長い間、
自分の判断を、組織の判断に預けてきたのだと感じた。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
あるとき、日帰り手術を行っているクリニックを訪れた。
そこで見たのは、
手術を終えて、自分の足で歩き、帰宅していく患者さんの姿だった。
「入院していれば安全」という、
私の中の前提が、静かに崩れ落ちた。
同時に、もう一つのことが見えた。
そのクリニックで行われていた判断は、
「病院のルールだから」でも、
「前例があるから」でもなかった。
「この患者さんにとって、これが最善だから」
という、明確な理由の上に立っていた。
その判断の重さと、清潔さに、私は驚いた。
そして同時に、羨ましいと感じた。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
開業を決めたのは、何かを劇的に変えたかったからではない。
その問いに向き合う場所を、
自分でつくるしかないと気づいたからだ。
大病院にいれば、
「組織の判断」を理由にして、
自分の判断を後回しにし続けることができる。
それは楽だ。
だが、私が感じてきた違和感は、
その「楽」の中から生まれていた。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
開業してから最初に取り組んだことは、
特別なことではなかった。
派手な仕組みをつくったわけでも、
制度を変革したわけでもない。
変わったことはただ一つ、
すべての判断を、自分で引き受ける立場になった、ということだ。
説明の時間を、意識的に確保する。
「なぜこの選択なのか」を、一人ひとりに言葉で伝える。
日帰りで対応できるかどうかを、一人ずつ丁寧に検討する。
外から見れば、「それだけか」と思われるかもしれない。
だが、現場では確かな変化があった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
判断を引き受けるということは、
言い訳を手放すことだ。
「病院の方針だから」は、もう使えない。
「前例がないから」も、理由にならない。
「制度上そうなっているから」で、思考を止めることもできない。
その代わりに、
何かが起きれば、その判断は自分のものとして返ってくる。
それは、楽ではない。
患者さんの反応が、その場で返ってくる。
説明が足りなければ、すぐに伝わる。
判断が甘ければ、結果に表れる。
だが、逃げ場がない分、
医療がどこで歪んでいるのかが、以前より見えやすくなった。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
「もったいない」と言ってくれた人たちは、
間違っていなかった。
大病院には、確かに失うものがあった。
組織の安心。
判断を分散させる仕組み。
「自分だけのせいではない」という余白。
それらを手放して、私が得たものは、
より大きな何かではない。
ただ、
「自分が、そう判断した」と言える立場だ。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
医療を変えたいという気持ちは、今もある。
だが開業を決めた瞬間、頭にあったのはもっとシンプルなことだった。
目の前の患者さんに、もっと誠実な判断をしたい。
その気持ちを、言い訳なく形にできる場所が必要だった。
医療を変えることと、目の前の一人に誠実であること。
私にとって、その二つは同じ方向を向いている。
– – – – – – – – – – – – – – – – – –
このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴ります。
外科医と経営者としての判断 〜医療は、誰が引き受けているのか〜 医療の「正しさ」は、本当に現場を支えているのだろうか。外科医として日帰り手術に取り組み、同時に理事長として医療法人の経営を担う中で、「誰が判断を引き受けているのか」という問いに行き着いた。判断から問い直す、医療の本質...
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は当院に相談を!
大宮駅から徒歩3分にある埼玉外科クリニックでは、腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っています。
当院は最難関の内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)の資格を持ったヘルニア外科医による腹腔鏡手術が受けられる、日本でも数少ない外科クリニックです。
ヘルニア外科医の院長松下が、責任を持って手術を行います。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は、まずは当院のヘルニア外来に受診してご相談ください。
電車でお越しの方
JR大宮駅西口より徒歩3分
車でお越しの方
当ビル1階入口に駐車場(1台、無料)
満車時はコインパーキング(有料)をご利用ください
埼玉外科クリニック鼠径ヘルニア日帰り手術センター
〒330-0854
埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-268エイコービル3階
048-650-2555(鼠径ヘルニア専門外来の予約専用)
診療時間:9:00〜17:30【完全予約制】
定休日:日曜・祝日
受付開始 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
午前 8:50〜 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 手術 | 休 |
午後 13:45〜 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 休 |
















