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外科医と経営者の視点

二つの判断を引き受けるという覚悟

外科医としての判断と、経営者としての判断。

この二つは、
本来まったく性質が違う。

外科医の判断は、目の前の患者に向かう。
時間は短く、結果は比較的はっきりしている。

経営者の判断は、目の前には現れない。
時間は長く、結果はすぐには見えない。

だから長い間、この二つは別の人間が引き受けるものと考えられてきた。

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私自身も、かつてはそう思っていた。

外科医は医療に集中すればいい。
経営は誰かがやればいい。

その分業は、確かに合理的だった。

だが、
医療を「続ける」という視点に立ったとき、
この分離は次第に成り立たなくなっていった。

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外科医として正しい判断が、
経営者の視点では組織を消耗させることがある。

経営者として合理的な判断が、
外科医としては割り切れないこともある。

どちらかを選べば、どちらかが歪む。

その違和感を、私は何度も感じてきた。

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では、
どちらが正しいのか。

その問いに、
私は今、
答えを出そうとはしていない。

むしろ、
どちらも正しいという前提に立つようになった。

正しいが、同時には成立しにくい。
その矛盾を、誰かが引き受けなければならない。

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二つの判断を引き受けるという生き方は、楽なものではない。

迷いが増える。
孤独になる。
はっきりしない判断を
抱え続けることになる。

外科医としての自分の中の「正しさ」と、
経営者としての別の「正しさ」が、ぶつかり合う。

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それでも、
この生き方を選ばざるを得なかった理由がある。

それは、
どちらか一方に判断を預けてしまうことで、
医療が続かなくなっていくのを見てきたからだ。

理想だけでは、続かない。
現実だけでは、意味を失う。

その間に立つ人間が、必要だった。

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二つの判断を引き受けるとは、万能になることではない。
すべてを決めることでもない。

むしろ、
決めきれなさを引き受け続けることに近い。

今日の判断が、本当に正しかったのか。
別の選択はなかったのか。

その問いを、消さずに持ち続ける。

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日帰り手術を一つの形として続けてきた中で、
私はこの感覚を何度も味わってきた。

安全と生活。
理想と持続。
現場と制度。

そのどれもを切り捨てずに、
どれも完全には満たせない。

それでも、「今はこれを選ぶ」と決め続ける。

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二つの判断を引き受けるという生き方は、英雄的なものではない。

目立たない。
称賛されにくい。
失敗の責任だけが
残ることもある。

だが、
誰かがこの役割を引き受けなければ、
医療は静かに続かなくなっていく。

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私は、この生き方をすべての医師に勧めたいわけではない。

だが、
こうした立ち位置が医療の中に存在し続けることは、
必要だと思っている。

判断を分断しない人間。
理想と現実の間に立ち続ける人間。

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二つの判断を引き受けるという生き方は、完成形を持たない。

状況が変われば、判断も変わる。
社会が変われば、問いも変わる。

だからこれは、到達点ではなく、姿勢に近い。

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第3部で書いてきたのは、
「こうすべきだ」という答えではない。

外科医として、経営者として、医療と向き合う中で、
私が選び続けている一つの立ち位置だ。

二つの判断を引き受けるという生き方は、
決して楽ではない。

それでも、
この矛盾を誰かが引き受け続ける限り、
医療は完全には止まらない。

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このブログ「外科医と経営者としての判断」では、
外科医、そして経営者としての経験から感じたこと、迷ったこと、
現場で抱いてきた違和感を、
できるだけそのままの言葉で綴っていきます。

院長 松下公治

この記事は埼玉外科クリニック院長松下が執筆。腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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