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鼠径ヘルニアの院長コラム

鼠径ヘルニアとは?見た目の症状は?腹腔鏡手術を日帰りで!

鼠径ヘルニアとはどんな病気でしょうか?
鼠径ヘルニアは頻度が高い一般的な病気にも関わらず、あまり知られていない病気です。
ヘルニア外科医の松下が、鼠径ヘルニアについてわかりやすく解説します。

鼠径ヘルニア(脱腸)とは?

鼠径ヘルニア(脱腸)とは、鼠径部(足のつけ根)のお腹の壁に穴があいて、そこから腸がぽっこり出てしまう病気で、俗に脱腸と言います。
立つと鼠径部が膨らみ、横になると戻ります。

鼠径ヘルニア(脱腸)は男性に多い病気です

生涯発症率は男性が27-43%、女性が3-6%で、中高年の男性に多いよくある病気です。
国内では毎年12万人以上、世界では毎年約2,000万人が手術を受けていて、外科の中では最も手術数の多い疾患です。

鼠径ヘルニア(脱腸)の原因は?

多くは加齢に伴って腹壁の組織が弱くなり、そこから腸が脱出してしまうことが原因です。
もっと細かく説明すると、腹壁の筋膜が裂けてしまった状態です。
立ち仕事が多かったり、腹圧がかかる重いものを持つ仕事も原因の一つに挙げられます。
肥満や喫煙も一因と報告されています。

鼠径ヘルニアになりやすい人の特徴

  • 立ち仕事が多い方
  • 腹圧がかかる重いものを持つことが多い方
  • 咳や便秘で腹圧がかかることが多い方
  • 肥満の方
  • 喫煙する方

小児の鼠径ヘルニアの原因は、成人と異なります。腹膜鞘状突起が閉じないことによる先天的な原因によって、鼠径ヘルニアになります。

鼠径ヘルニア(脱腸)はどんな見た目?

鼠径ヘルニア、脱腸、写真
典型的な右鼠径ヘルニアのイラスト画像です。
写真で見るとわかりやすいのですが、プライバシー保護のため、イラストで見た目を再現しました。

イラストではわかりやすく色をつけていますが、皮膚の色は周囲と同じです。
立ち上がったりお腹に力を入れると、足のつけ根がぽっこり膨らみます。
進行すると陰嚢まで膨らみが大きくなることもあります。
ヘルニアの大きさは様々で、ピンポン球ぐらいからソフトボールぐらいまで大きくなってしまう場合もあります。

普段は膨らみがなく時々しか膨らまない方は、膨らんでいる様子を写真に撮って受診すると診断がスムーズになります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の症状は?

鼠径ヘルニアの初期症状は、鼠径部の膨らみ(しこり)と違和感です。
お風呂で鼠径部がぽっこり膨らんでいることに気づく人が多いです。

鼠径ヘルニアの症状一覧

  • 立ち上がったりお腹に力を入れると、鼠径部がぽっこり膨らむ
  • 膨らみを手で押したり横になると、戻って無くなる
  • 立って鼠径部を見ると、膨らみに左右差がある
  • 鼠径部に重い感じや引きつったような違和感や痛みがあり、長時間立っていたり、腹圧がかかると悪化し、横になると楽になる
  • (男性の場合)陰嚢が腫れている

このような症状があったら、鼠径ヘルニアの症状かもしれませんので、ヘルニア外来でご相談ください。

鼠径ヘルニアの痛みは?

鼠径ヘルニアの症状は、違和感ぐらいのことが多いです。
人によっては痛みを感じることもあり、重い感じや引きつれたような痛みなど様々です。
鼠径部の膨らみがなく、痛みだけの場合は、他の病気も念頭において診断する必要があります。

鼠径ヘルニアの自己診断チェックリスト

  1. 立ち上がったりお腹に力を入れると、足のつけ根(鼠径部)がぽっこり膨らむ。
  2. 立った状態で足のつけ根を見ると、膨らみに左右差がある。
  3. 手で押したり横になると、クチュクチュッとした感じで戻って無くなってしまう。

チェックリストの1-3が全て当てはまる場合は、典型的な鼠径ヘルニアですので、自己診断できます。
全て当てはまらない場合は、他の病気の可能性を考えて、超音波検査やCT検査を併用して精査し診断します。
女性の鼠径ヘルニアでは、大腿ヘルニアヌック管水腫、子宮内膜症などと関連することもあり、自己診断は難しいです。

鼠径ヘルニア(脱腸)は何科に受診すれば良いですか?

鼠径ヘルニア(脱腸)は、近くの病院にヘルニア外来があれば最適です。
ヘルニア外来は通常、鼠径ヘルニアを専門に診療していますが、その内容は病院によってまちまちですので、ホームページなどでよくご確認ください。
整形外科の椎間板ヘルニア(全く別の病気です)と間違えることがあるので、ご注意ください。

多くの病院では、外科・消化器外科で対応していることが多いです。
手術をして治す病気なので、手術をすることも念頭において受診する病院を選択した方がいいです。

鼠径ヘルニア(脱腸)を診断するための検査は?

鼠径ヘルニア(脱腸)は外科医が診察(感度75%、特異度96%)することで、ほとんどの場合は診断することができます。
立ち上がると鼠径部がぽっこり膨らみ、押すとクチュクチュっと戻る場合は、触っただけで診断が可能です。

しかし、鼠径部の膨らみがはっきりしない場合や、しこりが触れて押しても戻らない場合などは、他の病気の可能性を疑う必要があります。
超音波検査(感度86%、特異度77%)やCT検査(感度80%、特異度65%)などを併用して診断します。

超音波検査はすぐにできますので、診察室に常備してよく利用しています。
立った状態で負荷をかけて検査ができるので、多くの情報が得られ非常に有用です。

CT検査は腹臥位で撮影することで、より診断の精度を上げることができます。

鼠径ヘルニア(脱腸)の治療方法は?

鼠径ヘルニアの治療方法は、手術が唯一の方法です。
鼠径ヘルニアは、お腹の壁に穴が開いて、タイヤがパンクしているのと同じような状態です。
以前は穴を糸で縫い合わせて塞いでいました。
しかし、痛みが強く、回復に時間がかかり、再発が多いことから、現在では穴にメッシュを敷いて塞ぐのが一般的な治療方法です。

鼠径ヘルニア(脱腸)を手術しないで治す方法はありません

成人の鼠径ヘルニアを手術しないで治す方法はありません。
物理的に穴が開いていますので、穴を塞がないと治りません。
自然に塞がることはなく、徐々に悪化していきます。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術とは?

鼠径ヘルニアの手術は、脱出した腸管をお腹の中に戻し、ヘルニアの穴を塞ぐ手術を行います。
鼠径ヘルニア手術を大きく分けると、腹腔鏡手術と鼠径部切開法の2種類に分けられます。
各々に利点・欠点があるので、一人ひとりにあった手術方法を選択する必要があります。

  1. 腹腔鏡手術:お腹に穴を開けて手術する方法。
  2. 鼠径部切開法:お腹を切って手術する方法。

当院の日帰り手術はどんな麻酔法ですか?

当院の鼠径ヘルニアの日帰り腹腔鏡手術は、全身麻酔で行っています。
全身麻酔は、麻酔科専門医が行っています。
点滴から麻酔薬を投与すると10秒ほどで眠ってしまい、手術が終わったら目が覚めます。
手術中は完全に寝ていますので、意識は全くなく、痛みも全くありません。

麻酔で使用する薬は、作用時間が短いものを使っています。
そのため、通常の全身麻酔よりも目覚めるまでの時間が早く、日帰り手術には欠かせません。

麻酔中によく行われる処置として、尿道カテーテルの留置がありますが、当院では通常行っていません。
手術後の尿道の痛みを防ぎ、体の負担を少しでも減らすためです。

全身麻酔に関連した合併症は?

全身麻酔に関連した合併症(併存症)は、アレルギー、吐き気、のどの痛み、歯の損傷、せん妄、肺炎、喘息発作、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、肺塞栓症、悪性高熱症などがあります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術とは?

鼠径ヘルニアは日帰り腹腔鏡手術で治療することができます。

鼠径ヘルニア(脱腸)手術の入院期間は?

日本では、鼠径ヘルニア手術の入院期間は平均4.8日です。
当院の日帰り手術では、在院時間は平均4時間ぐらいです。

欧米では一般的に行われている日帰り手術ですが、日本では未だに6.5%程度しか日帰りで行われていないのが現状です。
日帰り腹腔鏡手術を受けた患者さんの声を聞くたびに、もっと多くの方に受けてもらえるように頑張らねばと感じています。

松下 公治

松下 公治

この記事は院長松下が執筆しました。鼠径ヘルニア・虫垂炎の【日帰り】腹腔鏡手術を専門に研究。外科専門医、消化器外科専門医・指導医、内視鏡外科技術認定医(ヘルニア)。

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